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J-160E

ACOUSTIC MEETS ELECTRIC

1954年

誕生の背景

1954年、ステージでアコースティックギターを増幅するために誕生しました。

DESIGN

構造と音の個性

P-90ピックアップと音量・音質コントロールを備え、増幅時の扱いやすさを考えた構造を採用しています。

LEGACY

受け継がれる魅力

アコースティックとエレクトリックの境界を越え、1960年代のポピュラー音楽にも大きな足跡を残しました。

J-160Eを伝説にした物語

1954

「エレアコ」が当たり前ではなかった時代の挑戦

J-160Eは1954年、CF-100Eに続くGibson初期のピックアップ搭載フラットトップとして登場しました。ラウンドショルダーの姿はJ-45にも通じますが、目的は少し違います。ステージでアコースティックギターを電気的に増幅することを前提に、指板末端付近へP-90ピックアップを搭載。ヴィンテージ期にはラミネート・スプルーストップとラダー・ブレーシングを採用し、豊かな生鳴りだけを追うのではなく、アンプにつないだ時の扱いやすさも考えられた独特の設計でした。

その結果生まれた、乾いて軽快で少しコンプレッションを感じるような響きは、一般的なXブレーシングのGibsonとは違う個性になりました。J-160Eは「アコースティックにピックアップを付けただけ」ではなく、最初から二つの世界を行き来するために生まれたギターだったのです。

1962

John Lennon、George HarrisonとJ-160E

J-160Eの名を世界的なものにしたのは、The BeatlesのJohn LennonとGeorge Harrisonです。1962年、二人はリヴァプールのRushworth's Music Houseを通じてJ-160Eを入手しました。まだ世界を制覇する前のBeatlesが選んだ二本のGibsonは、その後の初期レコーディングやステージで重要な役割を担います。

彼らがJ-160Eを抱える写真は、今ではBeatles初期を象徴する光景のひとつです。ロックバンドの中でアコースティックギターを使いながら、必要ならアンプにもつなげられる。その性格は、アコースティックとエレクトリックを自由に行き来したBeatlesの音楽と非常に相性の良いものでした。

BEATLES

初期Beatlesの音に刻まれたJ-160E

J-160EはBeatles初期の数多くの場面で使われ、モデルそのもののイメージを決定づけました。とりわけ「I Feel Fine」で知られる冒頭のフィードバックは、当時としては極めて大胆な音の使い方として語り継がれています。箱物のギターとアンプが生むフィードバックを、避けるべきノイズではなく音楽の一部として利用する発想は、J-160Eが持つ“アコースティックとエレクトリックの境界”を象徴するエピソードです。

Beatlesの存在によって、J-160Eは単なる1950年代の実験的なモデルではなく、「あの音、あの時代」を連想させる特別な一本になりました。現在でも60年代仕様のJ-160Eが高く評価される背景には、楽器そのものの希少性だけでなく、この強烈な音楽史が重なっています。

LOST

消えた一本、半世紀を越えて再び姿を現す

Lennonが初期に手にした1962年製J-160Eの一本は、1963年の公演期に紛失し、そのまま長い間行方が分からなくなりました。ところが約半世紀を経て、そのギターとみられる個体が再発見されます。シリアルや木目などが検証され、Beatles史に残る失われたギターとして大きな注目を集めました。

2015年、このJ-160Eはオークションで約241万ドルという驚くべき価格で落札されました。価値を生んだのは古いGibsonだからというだけではありません。一人のミュージシャンと一本の楽器が、世界の音楽文化そのものと結びついた結果でした。

JAPAN

北川悠仁 ― 日本でJ-160Eを身近な憧れにした存在

日本では、ゆずの北川悠仁がJ-160Eの愛用者として広く知られています。特に1968年製のJ-160Eは北川の使用器として紹介されることが多く、テレビやライブでその姿を目にして、このモデルを知った人も少なくありません。

二人組の弾き語りを軸にしながら大きなステージへ進んだゆずにとって、ヴィンテージGibsonの個性的なルックスと歯切れのよい響きは強い存在感を放ちました。Beatlesに憧れるギターだったJ-160Eが、日本では次の世代のシンガーソングライターを通じて新しい憧れへ変わっていった。その流れも、このモデルの面白さです。

NOW

なぜ今もJ-160Eに惹かれるのか

現代のエレアコには、より自然なアコースティック音を再現できる高性能なピックアップが数多くあります。それでもJ-160Eは消えませんでした。むしろ、P-90、独特のブレーシング、ラウンドショルダー、アジャスタブル・サドルなどが生む「不完全さを含めた個性」に価値があります。

J-160Eを手にすることは、便利なエレアコを選ぶこととは少し違います。1950年代のGibsonの挑戦、1960年代のBeatles、そして日本のミュージシャンへと受け継がれた文化まで含めて楽しむこと。それこそが、70年以上を経てもこのギターが特別であり続ける理由です。

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